貧困にあえぐ45歳タクシー運転手。
年収約250万円で、今は100万円ほどの借金があります。
自分を否定してきた両親に「こんな私に誰がした」という思いがあるそうです。
現在の自分の困窮も原因は親にあると言っています。
たしかにキッカケは親だったのかもしれませんが、
他人のせいにしていたら、いつまで経っても変わらない気もしますね。
両親の呪縛が早く解けますように。
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貧困の原因は誰のせい?
最初に勤めた霞が関の官庁は、6年で辞めた。大学の医学部を受験しようと思ったからだ。アルバイトを掛け持ちしながら6年ほど勉強をしたものの、結果は出せずじまい。この間に購入した高級外車のローンと、スナック通いをしてできた消費者金融の借金を合わせた約500万円は、親が肩代わりしてくれた。
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ユウヤさん(仮名、45歳)の30代半ばまでのキャリアである。その後は、自動車工場の期間工などを経て、現在はタクシー運転手をしている。年収約250万円だが、「困っている人から頼まれると、ついお金を貸してしまう」と言い、今も100万円ほどの借金があるという。
私は現代の貧困の背景には、多くの場合、劣悪な雇用環境やセーフティネットの不備といった構造的な問題があると考えている。安易な自己責任論では、何も解決しないとも思っている。それでも、思わず言ってしまった。
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ユウヤさんの貧困は、ユウヤさんのせいなのでは……。
ユウヤさんからは質問に対する答えが返ってこないことが、時々あった。母親は専業主婦ですかと聞いているのに、なぜか、両親のなれ初め話や、父親がいかに亭主関白であるかという話が続く。国家公務員の仕事を辞めたときの経緯を尋ねたときは、いつの間にか、ユウヤさんが骨髄バンクに登録した話を聞かされていた。
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このため、ユウヤさんの半生について語ってもらうだけで、相当な時間がかかった。私も少し疲れたが、ユウヤさんはもっと疲れていたはずだ。根掘り葉掘り聞かれた揚げ句、「あなたの貧困は自己責任」などと言われては、普通はいい気持ちはしないだろう。しかし、ユウヤさんは、タオル地のハンカチで汗を拭いながら、恐縮至極といった様子でこう言うのだ。
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「申し訳ありません。私の話じゃ、記事にならないですか? もしかして、お時間を無駄にしてしまったでしょうか」
ユウヤさんは東京郊外で生まれ育った。父親は大手電機メーカーに勤務、母親は専業主婦。経済的な理由で大学進学を諦めた父親は、会社では出世街道を歩み、定年退職を迎えたときの役職は「役員の一歩手前」だった。また、親戚には、伊藤忠商事や東京電力、松下(現在のパナソニック)といった有名企業の役員を務めた人もいるという。
“社会的成功者”に囲まれ、ユウヤさんは幼いころから「僕は大きくなったら、総理大臣になるんだ」と思ってきたし、周囲からもそのように言われてきたと、振り返る。
小学生のときは、書道やそろばん、ピアノなど習い事のない日はなかった。自室の本棚には世界文学全集が並び、当時は1台30万円はくだらなかったパソコンも与えられた。中学校の入学式では、新入生を代表して答辞を読み、全国模試の成績もトップクラスだったという。
“いい子ちゃん”と“万引常習犯”の2つの顔
絵に描いたような優等生にみえるが、一方で「幼稚園のころから万引の常習犯だった」と、ユウヤさんは打ち明ける。虫歯になるという理由でお菓子を食べさせてもらえなかったため、コンビニでチョコレートや駄菓子などを、かなりの頻度で盗んでいたという。店員に見つかり、親からひどく怒られたこともあったが、しばらく経つと、また繰り返した。
「親の前では、完璧ないい子ちゃんでいなければいけないと思っていました。『お菓子が欲しい』ということも言ってはいけないと思っていたんです。テストの成績が悪いと、注意をされるのですが、それほどひどく叱られたわけでもないのに、『もう死ぬしかない』と思い詰めるようなところがありました」。
“いい子ちゃん”を演じても、万引にはしったのでは、本末転倒である。万引は、小学校に入ってからは回数こそ減ったものの、中学生のときに父親から、「この商品を売って生活している人もいるんだ」と言われ、ユウヤさん自身が、万引はなぜ悪いことなのか、ということを理解するまで続いたという。
歪んだプレッシャーと、人格が引き裂かれてしまいそうな二面性――。それでも、なんとか保ってきたバランスが崩壊したのは、高校受験がきっかけだった。
成績優秀だったユウヤさんは国立大学の付属高校を希望し、教師からは都心にある私立の進学校を勧められたのだが、父親が「高校までは地元の公立校で十分だ」と言って譲らなかったのだという。
結局、ユウヤさんは父親に従い、地元の進学校に入学。しかし、授業は欠席しがちで、成績も急激に落ち込んだ。代わりに、はまったのはプラモデルの収集。毎日のように複数の店舗を回り、飛行機や船のプラモデルを買い集めた。その数およそ500箱。それらは、1箱も開封されることなく、今も自室に山積みになっているという。
「受験を頑張ろうと思っていた矢先に、腰を折られたという“怨念”がいつまでもくすぶっていました。プラモデルを作るのではなく、買うことで、鬱憤を晴らしていました。今、ネットで売ったら、かなりの価格になるものもあるみたいです」
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「こんな私に誰がした」という思いが消えない
ユウヤさんは、両親からはずっと否定され続けてきた、と訴える。
大学受験に失敗した後に専門学校に進み、国家公務員のⅢ種採用試験(当時)に合格したときも、両親からかけられたのは、お祝いや労いの言葉ではなく、「なぜ、Ⅱ種じゃないんだ」という不満の言葉。アルバイトを掛け持ちしていたころ、葬式の席で会った親戚たちの前では、父親から「こいつみたいなちゃらんぽらんなやつは」と言われた。
「いつも、『もっと上を、もっと上を』と言われてきた気がします。谷底に落としたライオンの子どもに、さらに岩を投げつけてくるような人たち。国家公務員の仕事も、『そこで頑張れよ』とさえ言ってくれれば、辞めなかったと思います。だから両親に対しては、『こんな私に誰がした』という思いが消えないんですよね」
公務員を退職したのは、医学部受験のためだと、ユウヤさんは言った。その陰には、医者になれば、両親も認めてくれるのではないかという期待が、あったのかもしれない。
ただ、不思議なことに、ユウヤさんと両親の関係は決して険悪ではない。日産やホンダの自動車工場の期間工を雇い止めにされ、住んでいた寮を追い出されたときは、当たり前に実家に戻ったし、母親からは今も時々、数十万円単位で小遣いをもらうという。
ということは、ユウヤさんは親からもらった小遣いで、周囲にお金を貸しているというのだろうか。「派遣切りに遭って住むところがないという同僚や、急に失業して食費を切り詰めている友達から頼まれると断れないんです。お金を貸すことで、満足感を得ている自分もいます。うちは裕福だから、私を介して(その財産を)社会に還元していると思って、納得しています」とユウヤさん。
……。いや、普通は納得できないだろう。表向き穏やかに見えるが、ユウヤさんの親に対する“怨念”は、それだけ根深いということなのか。
さて、肝心の、ユウヤさんの貧困状態が、ユウヤさんのせいなのか、あるいは、そうではないのか、という問題についてである。あえて自己責任という物差しを持ち出すなら、今回はそう批判されても仕方のない面もあるのかもしれない。
一方で、私は最近、社会的ひきこもりの問題について取材をする機会が増えている。その中で、ある支援関係者の1人が、ひきこもりが増加している背景を、こんなふうに分析していた。
「濃密で、継続的な人間関係を築ける大人が減った、ということがあると思います。以前は、両親がいわゆる“毒親”でも、周囲に祖父母や親戚、近所のおじちゃん、おばちゃんといった両親に代わる大人がいました。
親から否定されても、子どもはそこで自己肯定感を修復することができたんです。こうした関係性はSNSでは代用できません。あるがままの自分を受け入れてくれる大人が減った――。これが、ひきこもりが増えた原因の1つなのではないでしょうか」
少子化が進めば、親が子どもにかける期待は高まる。期待は時に否定の言葉となって、子どもを傷つける。そして、子どもにはその傷を癒やす場所がない。親子関係の貧困は時にひきこもりに、時に経済的な貧困に陥る引き金となるのかもしれない。
https://bit.ly/35xI9Hv(情報源)
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ありがとうございました
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私は現代の貧困の背景には、多くの場合、劣悪な雇用環境やセーフティネットの不備といった構造的な問題があると考えている。安易な自己責任論では、何も解決しないとも思っている。それでも、思わず言ってしまった。
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ユウヤさんの貧困は、ユウヤさんのせいなのでは……。
ユウヤさんからは質問に対する答えが返ってこないことが、時々あった。母親は専業主婦ですかと聞いているのに、なぜか、両親のなれ初め話や、父親がいかに亭主関白であるかという話が続く。国家公務員の仕事を辞めたときの経緯を尋ねたときは、いつの間にか、ユウヤさんが骨髄バンクに登録した話を聞かされていた。
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“社会的成功者”に囲まれ、ユウヤさんは幼いころから「僕は大きくなったら、総理大臣になるんだ」と思ってきたし、周囲からもそのように言われてきたと、振り返る。
小学生のときは、書道やそろばん、ピアノなど習い事のない日はなかった。自室の本棚には世界文学全集が並び、当時は1台30万円はくだらなかったパソコンも与えられた。中学校の入学式では、新入生を代表して答辞を読み、全国模試の成績もトップクラスだったという。
“いい子ちゃん”と“万引常習犯”の2つの顔
絵に描いたような優等生にみえるが、一方で「幼稚園のころから万引の常習犯だった」と、ユウヤさんは打ち明ける。虫歯になるという理由でお菓子を食べさせてもらえなかったため、コンビニでチョコレートや駄菓子などを、かなりの頻度で盗んでいたという。店員に見つかり、親からひどく怒られたこともあったが、しばらく経つと、また繰り返した。
「親の前では、完璧ないい子ちゃんでいなければいけないと思っていました。『お菓子が欲しい』ということも言ってはいけないと思っていたんです。テストの成績が悪いと、注意をされるのですが、それほどひどく叱られたわけでもないのに、『もう死ぬしかない』と思い詰めるようなところがありました」。
“いい子ちゃん”を演じても、万引にはしったのでは、本末転倒である。万引は、小学校に入ってからは回数こそ減ったものの、中学生のときに父親から、「この商品を売って生活している人もいるんだ」と言われ、ユウヤさん自身が、万引はなぜ悪いことなのか、ということを理解するまで続いたという。
歪んだプレッシャーと、人格が引き裂かれてしまいそうな二面性――。それでも、なんとか保ってきたバランスが崩壊したのは、高校受験がきっかけだった。
成績優秀だったユウヤさんは国立大学の付属高校を希望し、教師からは都心にある私立の進学校を勧められたのだが、父親が「高校までは地元の公立校で十分だ」と言って譲らなかったのだという。
結局、ユウヤさんは父親に従い、地元の進学校に入学。しかし、授業は欠席しがちで、成績も急激に落ち込んだ。代わりに、はまったのはプラモデルの収集。毎日のように複数の店舗を回り、飛行機や船のプラモデルを買い集めた。その数およそ500箱。それらは、1箱も開封されることなく、今も自室に山積みになっているという。
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ユウヤさんは、両親からはずっと否定され続けてきた、と訴える。
大学受験に失敗した後に専門学校に進み、国家公務員のⅢ種採用試験(当時)に合格したときも、両親からかけられたのは、お祝いや労いの言葉ではなく、「なぜ、Ⅱ種じゃないんだ」という不満の言葉。アルバイトを掛け持ちしていたころ、葬式の席で会った親戚たちの前では、父親から「こいつみたいなちゃらんぽらんなやつは」と言われた。
「いつも、『もっと上を、もっと上を』と言われてきた気がします。谷底に落としたライオンの子どもに、さらに岩を投げつけてくるような人たち。国家公務員の仕事も、『そこで頑張れよ』とさえ言ってくれれば、辞めなかったと思います。だから両親に対しては、『こんな私に誰がした』という思いが消えないんですよね」
公務員を退職したのは、医学部受験のためだと、ユウヤさんは言った。その陰には、医者になれば、両親も認めてくれるのではないかという期待が、あったのかもしれない。
ただ、不思議なことに、ユウヤさんと両親の関係は決して険悪ではない。日産やホンダの自動車工場の期間工を雇い止めにされ、住んでいた寮を追い出されたときは、当たり前に実家に戻ったし、母親からは今も時々、数十万円単位で小遣いをもらうという。
ということは、ユウヤさんは親からもらった小遣いで、周囲にお金を貸しているというのだろうか。「派遣切りに遭って住むところがないという同僚や、急に失業して食費を切り詰めている友達から頼まれると断れないんです。お金を貸すことで、満足感を得ている自分もいます。うちは裕福だから、私を介して(その財産を)社会に還元していると思って、納得しています」とユウヤさん。
……。いや、普通は納得できないだろう。表向き穏やかに見えるが、ユウヤさんの親に対する“怨念”は、それだけ根深いということなのか。
さて、肝心の、ユウヤさんの貧困状態が、ユウヤさんのせいなのか、あるいは、そうではないのか、という問題についてである。あえて自己責任という物差しを持ち出すなら、今回はそう批判されても仕方のない面もあるのかもしれない。
一方で、私は最近、社会的ひきこもりの問題について取材をする機会が増えている。その中で、ある支援関係者の1人が、ひきこもりが増加している背景を、こんなふうに分析していた。
「濃密で、継続的な人間関係を築ける大人が減った、ということがあると思います。以前は、両親がいわゆる“毒親”でも、周囲に祖父母や親戚、近所のおじちゃん、おばちゃんといった両親に代わる大人がいました。
親から否定されても、子どもはそこで自己肯定感を修復することができたんです。こうした関係性はSNSでは代用できません。あるがままの自分を受け入れてくれる大人が減った――。これが、ひきこもりが増えた原因の1つなのではないでしょうか」
少子化が進めば、親が子どもにかける期待は高まる。期待は時に否定の言葉となって、子どもを傷つける。そして、子どもにはその傷を癒やす場所がない。親子関係の貧困は時にひきこもりに、時に経済的な貧困に陥る引き金となるのかもしれない。
https://bit.ly/35xI9Hv(情報源)
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