名門女子大生
つい、数か月前までは名門女子大生だった22歳。
しかし今は、精神疾患から退学して生活保護を受けています。
幻聴や幻覚まであるので、どこまで真実かはわかりませんが、
いま現在の生活は、精神的にもギリギリのようですね。


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紹介するのは、学費を払えず名門女子大を退学した22歳の女性。彼女はつい最近まで精神科に入院していた。

何週間もお風呂に入っていない

「なんの意欲もないです。着替えもできません。もう何週間もお風呂にも入っていないし、歯も磨いていません。ここにもやっと来ました……」

池袋。待ち合わせ場所に現れた石川美織さん(仮名、22歳)は、寝間着姿だった。髪の毛はボサボサでスッピン、全身から疲れ果てていることが伝わってくる。まさにボロボロといった第一印象で歩調も遅い。人の視線が怖いようで、おびえたような表情をする。逃げ込むようにして、待ち合わせ場所からいちばん近いカラオケボックスに入った。

「かなり重い統合失調症です。大学はどうしても続けられなくなって、3カ月前に退学しました。退学と同時に生活保護を受けています」

彼女の説明によると、池袋に近い住宅街で一人暮らし、家賃は5万3000円。毎月、家賃と合わせて14万円弱の生活保護費が振り込まれる。順調に学生生活を送っていれば大学4年生だ。しかし、病状は悪化の一途で退学を余儀なくされた。取材したのは11月17日。11月2日までは都内の精神科に1カ月以上、入院していたという。

退院してから2週間、ずっと部屋で寝ている。昼12時ごろに起き、二度寝。再び夕方に起きてぼーっとする。処方された薬を飲んで、深夜か朝方に倒れるように眠る。お腹がすいたら自宅の隣にあるコンビニでおでんを買う。この2週間、おでんしか食べていない。

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「退院から入浴していないし、歯も磨いていないです。着替えもしていない。病気と薬の後遺症で、なにもする気が起きないから」

彼女は口を開いて、前歯を見せてくる。上歯、下歯が何カ所も黒くむしばまれ、少し見ただけでも虫歯だらけだった。

店員に飲み物と食事を注文しながら、今年前期まで在籍した有名女子大学の学生証と、生活保護費が振り込まれる通帳、“お薬手帳”を見せてもらった。入学前に撮影した学生証には、現在のボロボロの姿からは想像つかない聡明な美少女が写っていた。

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「1年半前、大学3年の春にはバイトができなくなりました。だから病気が治るまで生活保護を受けていなさいって。病気は全然回復しません。最近は薬の飲みすぎで記憶がないことが多くて、生活保護を受ける直前は万引きで捕まりました。洗濯物を取り込んでいたつもりだったけど、それは店の商品だったみたいです。記憶がないんです」

そもそも、何をきっかけに精神科に入院したのだろうか。

「不眠が続いて、衝動的に首を吊ったからです。自分では制御できないし、正直つらいです」

統合失調症は妄想や幻覚が起こる精神機能障害、脳の病気といわれている。思考、知覚、感情、言語、感覚など、すべてに影響を及ぼし、異常な行動を起こしてしまう。服薬したからと治るわけではなく、副作用でパーキンソン症やジストニアなどを引き起こし、取り返しがつかない状態になることもある。


失恋して、衝動的に首を吊った

「自殺未遂は、彼氏に振られたことが理由でした。コンビニの店長で、しばらく連絡しないでほしいって言われた。統合失調症だから妄想が出て、トラブルがあって降格されたのかなとか、いろいろ考えた。言われたことを破って“大丈夫?”ってメールした。それで振られました。そのときは死にたいって気持ちもないのに、衝動的に首を吊りました」

具体的になにをしたのか聞く。タオルを結んでロープを作り、近くの公園に行ったという。滑り台に結んだタオルを引っかけ、首を吊った。のど元に衝撃と激痛が走って、地面に落ちた。

「どうして助かったかというと、タオルが足りなくて、途中ジャージを使ったから。ジャージ、タオルになると摩擦が少ないじゃないですか。解けてしまった。スポって抜けてバタンと落ちた。あ、失敗と思って、もう一度吊らなきゃと立ち上がったら、すごくのどが痛い。自分で救急車を呼んでレントゲンを撮ってもらったら、のどの骨にヒビが入っていました」

凄惨(せいさん)な内容に息を飲む。統合失調症は妄想や幻覚が激しくなって異常行動をする陽性症状と、無気力状態が続く陰性症状が繰り返される。現在は歯も磨く気力がない状態だが、無理して池袋まで来ている。陰性症状である。そんな状態で時間どおりにやって来たこと、それに言葉が多いことから“話を誰かに聞いてもらいたい”という強い意志を感じる。

お薬手帳に現在処方される薬があった。数えると、強い副作用がある抗精神薬も含め15種類。あまりにも多い。

どうして、そんな現在を迎えてしまったのか、過去にさかのぼって、ゆっくりと話を聞くことにした。出身は関西、中学から一貫進学校に進んでいる。

「勉強は正直、かなりできました。中学3年のときに志望を京都大学に絞った。私、中学3年生から高校2年の夏休みまで、ベッドで眠ったことがほとんどないんです。机の下で寝ていました。足を折りたたまないと横になれなくて、すぐ目が覚める。また、勉強できる。意識して睡眠時間をとらないで勉強する、みたいな生活を3年間やった。家庭学習だけで1日8時間以上でした」

異常な睡眠不足。家から駅まで徒歩5分、目をつむって眠りながら歩いていることが近所で話題になった。隣人から「おたくの娘さん、いつも放心状態で歩いているけど大丈夫?」と心配される状態だった。


寝ないで勉強したのに成績が伸びなかった

「高校2年の夏休み前、河合塾の模試で京都大学がB判定だった。1年前に同じ模試を受けて、そのときもB判定だった。眠らないで勉強したのに成績が全然伸びなかった。それから、おかしくなりました」

勉強しようとペンを持つと、胸が痛くなって過呼吸になる。最初の異変だった。

「夏休みはいっぱい勉強しようと決めたけど、過呼吸が始まって宿題すらいっさい手をつけられなかった。2学期の始業式、どうしても学校に行きたくなかったけど、行きなさい、行きなさいって。でも、教室に入れなかった。勉強する場所に行くと悪寒がしたり、震えたり、過呼吸になったり。それで保健室通いが翌年3月まで続きました」

病院に行くと「うつ病」と診断された。リストカットとフットカット、不眠が始まって薬を飲むようになった。朝、時間どおりに起きることができない。高校2年の夏休み以降、一度も教室にも入ることができないまま、3年に進級した。

家庭にも問題があった。本人の説明によると、父親は横暴な人物で、母親は夫のモラハラで精神疾患になった。兄と姉は高校を卒業して逃げるように実家を出て、勉強ができなくなった石川さんは自宅でリストカット、フットカットを繰り返した。

「当時、私にはかなりのリストカット、フットカット傷があって、父親はそれを眺めて『本当に死にたい奴は、そんなところ切らねえ』って怒鳴った。死にたくて切っているわけじゃないと言ってくるから、違うと言い返しても『死にたいみたいなアピールをして、みんなの注目浴びたいだけ』って。傷だらけなのに、どうしてそんなことを言うんだろうって思った。SOSを出しているのにって」

高校3年の夏、両親は離婚。精神疾患になった母親は家を出て生活保護を受け、父親との2人暮らしになった。ストレスは増えるばかりで、勉強をすることもできなかった。成績は急降下した。目標としていた京都大学を受験できるような状態ではなかった。そこで東京にある私立女子大に志望大学を変更し、無事に合格して進学した。ここは名門と呼ばれる有名女子大である。

私大進学に反対だった父親は、学費以外は全部自分で稼ぐ条件で渋々学費を出した。女子大の寮に入り、日本学生支援機構から月11万3000円の奨学金を借りた。アルバイトで最低数万円は稼がないと、学生生活は送れない。

「東京に来てから状態が本格的に悪くなりました。順番に言うと、1年から2年夏までは過食症。2年夏から4年春まで、うつ。4年春から今が統合失調症。うつ病になった経緯は、サークル週3、学校週5、週4深夜バイトでした。牛丼チェーンで人手が足りなすぎて、勤務時間がどんどん長くなった。最終的に週4日眠る時間がない日ができて、カラダが壊れてしまいました」

大学生になって過食症になった。一度の食事で菓子パンを30個以上、食パンを3斤食べることもあり、膨大な食費がかかった。奨学金ではおカネが足りなくなって、牛丼チェーンでアルバイトを始めた。

「若かったから週4日眠れなくても、ギリギリ学生生活はできていました。1年間くらい続けてからおかしくなってきて、不眠症がひどくなった。寮を出て彼氏と一緒に住みはじめて、彼が寝てから夜中3時くらいに24時間営業のスーパーでリキュール買って。1本飲んでも全然酔えなくて眠れないって状態。昼間逆転して学校も休みがちになって、バイトは続けることができませんでした。時間どおりの仕事ができなくなって、クビです。それで、出会いカフェで稼ぐようになりました」


1万円で見知らぬ男にカラダを売った

大学の同級生に風俗で働く女の子がいた。現状を相談したとき「カラダを売るのでなければ、風俗は楽だよ」と勧められて、面接に行った。過食症で太っていたこともあり、面接で門前払いされた。そこで出会いカフェに行った。出会いカフェは売春の温床となっている場所。買春したい男性と、売春したい女性が集まっており、それぞれ交渉して援助交際や個人売春をする。

「カラダが動くときに渋谷か池袋の出会いカフェに行って、値段は1万円とか2万円とか。寮にもいられなくなって、今の部屋に引っ越しました。カラダを売って25万円くらいなんとか貯めました」

見知らぬ男にカラダを売り、さらに状態は悪くなった。不眠は悪化して、もういつ眠れるかわからなくなった。病院に通うようになって処方される薬もだんだんと増えた。

カラダを売る生活は3カ月で限界となった。おカネの不安が強くなって幻聴がはじまった。このときにも彼氏宛てに遺書を書き、彼氏の家で首を吊る、というトラブルを起こした。

「どうして、そうなったのかわからない。出会いカフェに行こうとすると熱が出るようになって、毎日、毎日、死にたいと思うようになった。原因がわからない。まず耳元で『お前はもう社会の役に立てないから、死んだほうがいい』みたいな声が聞こえて、本当に怖い。幻聴です。それが聞こえないようにワー、キャー大きな声で叫んで、叫ぶと幻聴はもっと大きくなる。もう1人じゃどうにもできない錯乱状態で、その延長の自殺未遂でした。たまたま、彼氏がいたので助かりました」

昨年夏(大学3年生の夏)には学生生活どころか、なにもできなくなった。

統合失調症の陽性症状では幻覚や幻聴に苦しみ、陰性症状にある現在は、まったくの無気力状態だ。これまでは、サークルの先輩、出会いカフェで知り合った介護福祉士、自殺未遂のきっかけとなったコンビニ店長など、知り合った男性に依存しながら、なんとか生きてきたが、もはやギリギリの状態だ。


幻聴に幻覚、そして錯乱

「この前、体調的にとても病院に行くことができなくて、一度薬を切らしたことがあった。金曜日に薬がなくなって月曜日まで薬がない、って状態。ずっと玄関のドアをドンドンドンドンってたたかれて、ああー!って女の叫び声が聞こえて、何?と思って、玄関ののぞき窓をのぞいた。そうしたら首から上のない人が2人いて、お母さんと子どもみたいな。そうしたら玄関がぐにゃって変形して、私の腕から虫が湧いてきて、虫が湧いているのに2人の手が伸びてきて錯乱状態になりました」

二の腕にいくつものひっかき傷があった。虫が湧いて錯乱したときの傷だった。

ここで話は終わった。

「奨学金の借金が500万円くらいあり、今年中に自己破産します。もう一度勉強して、志望する国立大学に入って人生逆転したいです。もうラストチャンスと思っていて、早く勉強をはじめたい。今は体調的に無理だけど、落ち着いたらすぐに勉強はじめます」

そう前向きな希望も話してくれた。しかし、とてもではないが、勉強をはじめることなど無理だろう。仮に受験前に病状がよくなりなんとか入学できたとしても、アルバイトで生活費と学費を稼ぐのは難しい。自己破産を今年中にするので、奨学金やローンももう使えない。なんて声をかけていいのかわからなかった。

あまりに薬の量が多かった。彼女に許可をもらい、お薬手帳の現在の処方箋の写真を撮って知り合いの薬剤師に見てもらった。

「一度にこれですか。信じられない状態ですね。カラダがだるいとか死にたいとか、言っていませんか? 飲むことでマイナスになっていないのか心配になります」

薬剤師は驚いていた。現状は自殺願望はなく、無気力で過食症ぎみだったことを伝えた。

「今、自殺願望がないなら陰性症状かもしれないですね。典型的な処方カスケード(薬の追加が悪化を招くこと)な気がするので減薬できればいいように思います。年齢や体格、既往歴、肝腎機能、治療経緯がわからない中でコメントは難しいですが、病院を変えることも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。本当に不安が強くて、強く強く不眠を訴えられたのでしょうね。いい方向に行ってほしいです」

後日、石川さんに薬剤師のアドバイスを伝えた。まだ、22歳。立ち直ってほしい。
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