東芝妻の怒り
粉飾決算を繰り返していたことが発覚した東芝。
この他にも、原発事業や天然ガスでも巨額の赤字を垂れ流し・・・
会社の前途は多難ですが、東芝社員は痛みをモロに受けているようです。
ハイソな生活が一転・・・人生、何が起こるか分かりませんね。


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粉飾決算を繰り返していたことが発覚したうえ、原発事業が巨額の赤字を垂れ流したことなどもあり、経営危機に陥った東芝。その影響は、社員とその家族たちにも及んでいる。

「あの人はどうしてボロボロになってまで東芝に執着するのか、わからないんです」

 そう語るのは、森田博美さん(仮名・40才)。18年前に10才年上の東芝社員である夫と結婚した森田さんだが、当時、彼女の両親は「10才上の夫なんて冗談じゃない。娘の老後が大変なことになる」とふたりの結婚に猛反対した。

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「それでも夫の職業を聞くと、『そうか、東芝さんか。それなら年金や福利厚生も充分だろうし、倒産もないだろうから、ぜひ結婚してくれ』と手のひらを返してOKが出ました。私も結婚後は東芝ブランドを信じて安心して家庭に入り、子育てに専念しました」(森田さん)

 夫婦の自宅は東京・板橋の両親の土地に建てた二世帯住宅で土地代がかからなかった。その分を2人の子供に注ぎ込み、学習塾のほか、数学や国語の単科やピアノを学ばせて、年間の習い事代はおよそ200万円に達した。現在は2人とも中高一貫の私立に通う。

 夫の年収は年功序列で上がり続け、森田さん一家は何不自由ない暮らしを送っていた。しかし、不正会計発覚とともに生活は激変した。

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「不正会計の発覚後、業績が悪化して会社から給与にまつわる『緊急対策』が組合に提示されました。社員の雇用を守るため組合がこの提案を受け入れた結果、毎月の収入が3万円減って、ボーナスが50%カットになりました。夫の年収は一気に180万円も下がり、子供たちを私立に通わせる余裕がなくなりました」(森田さん)

 少しでも家計を助けるため、住宅ローンを安いタイプに変更しようとした彼女は大きなショックを受ける。余裕で通過すると思っていた審査が通らなかったのだ。

「以前は金融機関で『夫は東芝です』と言えば、どんな審査でも間違いなく通してもらえました。それなのに、今はまったく信用がなくなってしまったことは大きな衝撃でした」(森田さん)

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両親からは「東芝だから結婚させたのに」

 背に腹はかえられず、森田さんは結婚以来、18年ぶりに外に出て働くことを決意した。とはいえ、ずっと専業主婦だったため資格はなく、職歴もないに等しい。自宅でワードやエクセルの使い方を必死に勉強し、10社目でようやく会社事務のパートにありつけた。それでも収入は雀の涙ほど。仕事をしながら、節約に励む。

「これまで通販で買っていた海外ブランドの化粧品をドラッグストアで販売している800円以下のチープな化粧品に変え、少しでも安い食材を買うために自転車で遠くのスーパーに通っています。子供の栄養のため、食べ物のグレードは何とか落とさないよう頑張っていますが、将来のため学ばせていた中国語の塾はやめさせました」(森田さん)

 結婚して一生安泰のはずが、待っていたのは爪に火をともす日々だった。将来のことを考えると、森田さんの心配は尽きない。

「転職や早期退職するかたが多いなか、会社に残った夫の仕事は人が減った分、激増して残業漬けの毎日です。万が一、夫が体を壊して働けなくなったらと思うと胸が苦しくなり夜も眠れません。うちの両親からは、『東芝だから結婚させたのに』と嫌みを言われるし、夫の両親からは私が働き始めたことに対して、『本当にごめんなさいね』と謝られます。

 義父や義母に罪はないのに心苦しく、会社の不正で関係ない私がこんなに嫌な思いをするなんて、割に合わないと思います。お給料も下がったし、イメージも最悪になった今、どこか別の会社に転職したっていいのに夫はそれをしない。これまで自分が会社に身を捧げてきたから、東芝が崩壊していることを認められないんです。会社は何もしてくれないのに…。

 日曜日の夜、『サザエさん』を見ながら『これだけが今おれたちを照らしてくれる光だ』なんて言う姿を見ると、冗談じゃない、『サザエさん』のスポンサーなんか今すぐ降りて私たちに還元してよ、と怒りがこみ上げてきます」(森田さん)

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思い描いていたハイソな生活がぶち壊しに

 粉飾決算が発覚した直後の2015年7月の会見で、当時社長だった田中氏は、不正会計について問い質されても「第三者委員会の報告書をご覧ください」と語るなど、当事者意識のない無責任な発言が相次いだことも、森田さんら“東芝妻”たちの怒りを増幅させる。

思い描いていたハイソな生活がぶち壊しになったと嘆くのは、宮川雅子さん(仮名・55才)だ。夫は東芝本社の営業畑で勤続30年以上。入社間もない夫と職場結婚したとき、将来の不安は微塵も感じなかった。

「メーカーは若い頃のお給料が低いけど、収入が確実に上がって福利厚生も手厚いので、将来はすごく豊かな生活ができると信じていました。“安定”を絵に描いたような生活を思い描いていたんです」

 事実、夫の上司たちは、優雅な暮らしを送っていた。

「東芝のエリート社員は30代後半から40才そこそこで主任か課長になり、マイホームを購入します。さらに部長職になると海外勤務があり、海外赴任中は手当などで収入が倍になるうえ、日本に残した持ち家を賃貸に回してローンを完済できます。海外赴任から帰国後に新しい家をもう一軒購入するのが、当時の出世コースに乗った社員たちのステータスでした」(宮川さん)

 幸い、夫は順調に出世して課長に昇進した。海外出張が多く、年間80日ほど家を空ける夫の代わりに、宮川さんは家を守って2人の子供を育てた。当時、夫のボーナスは260万円あった。

 だが、東芝の業績は急激に悪化した。それに伴って、夫の給料は大幅にカットされた。


「不正会計が発覚した時のボーナスは13万円でした。いちばん羽振りがよかったときの20分の1ですよ。思い描いていた人生設計が妄想に終わってしまったことを思い知りました」(宮川さん)
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